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近藤さんち

ブラック派だったけど最近はミルク入れて飲むよ

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2017.11.22 (Wed) Category : 

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糸を繋げた一本

2010.09.07 (Tue) Category : 未選択

「……本が欲しい?」
「ああ、小学生くらいの子供が好みそうなものなら何でもいい」
 つれない従兄弟からの唐突な着信。用件は、単純ながらどこか不思議な頼みだった。
 何故そこで子供なんて単語が出てくるんだ。君は本が読めるような子供がいる年でもないだろう?相変わらず説明が足りない――と、いつもならまさに立板に水の如く言葉を浴びせるところだが。従兄弟の声の端々にあまり穏やかではない様子を感じた僕は、それらを一旦喉の奥にしまいこんだ。
「でも僕、本なんて持ってないよ。というか部屋も家具もない遊牧民だし」
「俺も似たようなもんだ」
「え」
 つい先ほど喉の奥に留めた言葉が、また顔を覗かせる。
「……この僕と比較して言ってるのかい?人をからかうもんじゃないよ」
「お前が言うな」
「それもそうですね」
「まあ、ないならないで構わない。いきなり悪かった。それじゃ」
「いやいやちょっと待って」
 こいつは用件が済むと、いつも一瞬で電話を切る。そうはさせない。
 僕は、僕にばかりそっけない従兄弟に先ほど浮かんだ疑問を伝えた。だってこいつ、普段は人当たりがすごくイイくせに僕にだけツンツンなんだよ?それってつまりデレの裏返しじゃないか。だからこれは、従兄弟語で「訳アリだから聞いてくれ」って言ってるんだよ。僕の空気読みっぷりは本当に素晴らしいね。
 そんな風に考えながら会話を続ける器用な僕に対し、電話の向こうの彼は非常にシンプルに理由を告げる。手短なのは忙しい僕への配慮であり、決して嫌々話しているわけではないはずだ。
 聞くところによると、その”子供”というのは会社の同僚の子供のことらしい。親がその子に電源が要らずあまりお金もかからない静かな一人遊びの出来るものをと考え本を与えていたところ、自分達が知る大抵のものはもう読み尽くしてしまったと。しかし、退屈にはさせたくないんだそうだ。
 親切な僕が遊び相手に立候補してみたけど、他人の家のことだからという点で遠慮されてしまった。僕が鬱陶しいからとも聞えた気がしたのは幻聴だろう。最近寝不足だったしね、脳が疲れてる時のネガティブな勘違いはよくあることだもの。
「とにかく、ないならいいんだ。じゃあな」
「ままま待って待って!本当にせっかちだなあ君は!」
「何だ」
「え、えーと……あ、ある!本あるよ!実はすぐそこにいっぱい置い」
「そりゃそうだ。お前、駅前の漫画喫茶に入ろうとしてたところだってさっき言ってたじゃないか」
「はい」
 ほら、僕のちょっとした一言もきちんと覚えてる。これがデレでなくて何だって言うんだ。
 僕は素直になれない従兄弟のために、携帯を肩で耳に押し当てながら全財産の入った鞄を漁った。
「あっ、でもね、ほんとにあるよ。ちょうど良さそうなの持ってるよ」
 勿論、そんなのは入ってない。でもこのやり取りは、従兄弟語の方を翻訳すると「どうしても僕に会いたいんだけどそれを言うのは恥ずかしいからどうにかして理由をつけた」ってことになるんだよね。これは彼に会いたい僕の思い込みではなく、そこまで察してあげられる僕のエアリード能力の高さ故の翻訳結果。この感知精度と情報処理速度は我ながらエスパーの領域だと認めるよ。
 それに、どうせ彼は今ここにいるわけではないんだ。彼に手渡すために会う前に、それっぽい本を手に入れればいいんだよ。会うまでに1、2日は猶予があるだろうし、アレの匂いを辿っていけば嘗て人の生活が営まれていた廃墟を見つけることくらいは容易いはず。会う前に適当なところをちょっぴり回ってみればいいんだ。
 こんな機転が利いちゃう僕の才能が心から恐ろしい――と思っていたら、すぐ後ろから聞き慣れた声がした。
「本、あるのか」
「いや、これから探すところだよ」
「やっぱりな。そんなことだろうからあまり期待はしていなかった」
「さすが僕ったら理解されてうわあああああなんでいるの!?」
 ふと振り返ると、愛する従兄弟が仏頂面で立っていた。清涼スーツをラフに着崩し、社会人として日が浅いながらもその姿がすっかり板についた様子で。
「ちょっと待って!これ何のドッキリだよ!君は会社員で今は昼間だよね!?」
「ちょうど昼休みだからな」
「そうですか……」
「で、ないんだな」
「ま、待ってください!あと1日!半日でもいいんです!絶対お渡ししますから!」
 気が動転した僕は、まるで返済期日の延長を申し出る時代劇の貧乏な町人のように彼に縋りついた。スーツ越しに両腕を掴まれた彼が顔を逸らしたけど、これは苦々しさを反射的に堪えるためではなく恥ずかしいからだな。正直者め!
 そんなハニカミ屋さんの従兄弟のために、気遣いに満ち溢れる僕がそっと手を放す。彼は顔をこちらへ戻して大きく溜息を一つ吐いた後、仰々しく襟を正した。もー、そういう仕草からしてすっかりサラリーマンだなー。小さい頃から知ってるだけにお兄さん感慨深くて、ちょっと涙出てきそうだよ。
「解った。今日は早めに切り上げる。23時半にここに来る」
「はいはい、……って遅ッ!早くてそれってブラックなんじゃないの?」
「残念ながら上司カッコ美人カッコ閉じとの食事があるからで」
「君って変な所で無駄に口が回るよね。カッコとか口で言わないよ普通」
「お前に普通とか言われたくない」
「はいはい」
 僕は彼に背を向けて、立ち寄ろうとしていた店の前を通り過ぎて歩き出した。行く宛てなんてないけど、ここは匂いがしないからね。
 つまり、彼を一人にしても平気だ。
「……気をつけていけよ」
「え?」
「いや、別に。約束すっぽかしたフリして遠くから観察してみようかと」
「ひっどいな!君の愛情表現よく解んないよ!」
 抗議のため思わず振り返った僕の目に映ったのは、恐らく昼食の調達にでも向かおうと踵を返したのだろう彼の背中。
 男としては少し背の低いその姿は、間もなくして雑踏に埋もれていった。
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プロフィール
HN:
近藤・翔太(b21769)
年齢:
24
性別:
男性
誕生日:
1993/07/07
職業:
高校二年生
趣味:
TVゲーム、工作
自己紹介:
 義理の両親とハムスターの3人+1匹暮らし。
 ぬるめのゲーヲタです。手先はそこそこ器用なんですよ!小物を改造したりフィギュア作ったりもするけど、最近はスイーツデコが楽しい。あ、外で遊ぶのも好きです。少人数も大所帯も楽しいよね!誘われたらほぼ100%ホイホイついていきます。
 こう見えてお父さんっ子だったりします。でもお母さんも大好きです。……ももも もちろんこゆきちゃん(ハムスター)も。怒ると怖いけど。

◆メッセ
 PL・他PC共用なのです。お手紙でどぞ。

◆ブログについて
 PBW「シルバーレイン」のキャラ用ブログです。なんぞそれ?と思ったらググるといいです。
 テンプレートは気分で変えてます。
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ステ傾向
 DEX>>STR>QUI=TGH>> WIS

お遊びな装備のときは
低MP魔法カードメインに支援中
普段防具で魔防補強してるので
支援中は魔防が紙です

→連続戦闘用
なんかつぶやくとこ

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